社内の声を爆速で反映する。社内NPS®を向上させる仕組みづくり

公開日:2026.07.17

はじめまして。AcompanyのConfidential AI Suite事業部門でエンジニアをしているスギムラです。

普段は、企業が機密情報や個人情報を守りながら生成AIを活用できる、AIチャットサービス「Acompany セキュアチャット(以下、セキュアチャット)」を開発しています。

私たちの事業部門では、プロダクトを成長させるための重要な取り組みとして、まずは社内の「NPS®(ネットプロモータースコア)の向上」に本気で向き合っています。ただし、社内NPS®のスコアを上げること自体がゴールではありません。私たちにとって社内NPS®は、「顧客が安全に生成AIを活用できる状態」という最終的なアウトカムに先行して計測できる中間指標です。本記事の取り組みも、すべてこの前提の上に立っています。

NPS®(ネットプロモータースコア)とは?

本題に入る前に、そもそも「NPS®」とは何かについて簡単に触れておきます。

NPS®(Net Promoter Score)は、ユーザーがプロダクトに対してどれくらいの「愛着」や「信頼」を持っているか、つまり「顧客ロイヤルティ」を数値化する指標です。

具体的には、「このプロダクトを友人や同僚にすすめる可能性はどれくらいありますか?」という質問に対し、0〜10点の11段階で評価してもらいます。その点数に応じて、ユーザーを以下の3つのグループに分類します。

推奨者(9〜10点) : プロダクトの熱心なファン。自ら積極的に使い、他者にもすすめてくれる層。

中立者(7〜8点) : 満足はしているが、熱狂的ではない層。他により良いものがあれば乗り換える可能性がある。

批判者(0〜6点): プロダクトに不満を持っており、場合によってはネガティブな評価を広める可能性がある層。

全体の回答者のうち、「推奨者の割合(%)」から「批判者の割合(%)」を引いた数値がNPS®のスコアとなります。単に「満足していますか?」と聞くアンケートに比べて、「他人にすすめるか?」という行動を問うため、よりシビアにプロダクトの真の価値がスコアに反映されるのが特徴です。

参考: NPS®とは(NTTコム オンライン)

日本におけるNPS®の特異性

ちなみに、NPS®を指標とする上で知っておくべき重要な前提があります。それは「日本人は海外のユーザーに比べて、NPS®が低く算出されやすい」ということです。

欧米などでは良いと思えば積極的に「9や10」をつけますが、日本の文化的な傾向として、極端な評価を避けて無難な「中間点(5〜7点)」をつける人が非常に多いと言われています。

NPS®の計算式では「0〜6点はすべて批判者」として扱われるため、日本では「そこそこ満足している(5〜6点)」というユーザーが多いだけでもスコアが大幅にマイナスに振れてしまいます。

私たちが「社内NPS®」にこだわる3つの理由

では、なぜ私たちがこれほどまでに社内のNPS®にこだわっているのか。その根底には次のような考え方と仕組みがあります。

社内の熱狂なくして、顧客の満足は得られない

「まずは社内のNPS®を向上させ、自分たちが心底おすすめできる状態を作れなければ、社外のお客様から十分なNPS®を獲得することなどできない」という強い思いを持っています。

OKR の KR としてコミットしている

全社OKRにおいて Key Result の一つとして「NPS®で特定のスコアを獲得する」という明確な数値を設定しています。

改善や新機能の優先度を上げ、爆速で反映させるため

指標として明確に追うことで、NPS®向上に直結する改善タスクの優先度を正当に引き上げることができます。これにより、社内から上がってきた改善要望や新機能のアイデアを、ドッグフーディングを通じて爆速でプロダクトに反映させるサイクルが回るようになります。

本記事では私たちがこの目標を達成するために、日々どのようなアプローチで社内NPS®の向上に取り組んでいるのかをご紹介します。

社内NPS®を上げるための「仕組みづくり」と「サポート体制」

前述の通り、NPS®は日本では特にシビアに出やすい指標です。だからこそ、私たちは思いつきの単発施策ではなく「仕組み」で社内NPS®を底上げすることにしました。

NPS®を向上させるためには、単に新機能を作るだけでは不十分です。「ユーザーが困ったときにすぐ助けてもらえる」「要望を出したらちゃんと聞いてくれる」というプロダクトとチームへの信頼が不可欠です。

私たちは、この信頼を社内で築くために、具体的に次の3つに取り組んでいます。

心理的ハードルを下げる「専用Feedbackチャンネル」の開設

社内のコミュニケーションツール(Slackなど)に、セキュアチャット専用のFeedbackチャンネルを作成しました。

ここでは、バグの報告やガッツリとした機能要望だけでなく、「ここがちょっと使いづらい」「こんな風に使いたいんだけどどうすればいい?」といった些細なことでも気軽に投げ込める窓口にしています。ユーザーが「こんなこと言ってもいいのかな…」と迷う時間をなくすことが狙いです。

「5分以内のファーストレスポンス」とネクストアクションの提示

Feedbackチャンネルに投稿があった際、担当者は「5分以内」にファーストレスポンスを返すというルールを設定しています。速さ自体が目的ではありません。「出した声が無視されない」という体験を保証するための下限ルールです。

単に「確認します」と返すだけでなく、「いつまでに直すか」「それは仕様なのか、どう改善する方針か」といった具体的なネクストアクションに繋がる返答を徹底しています。

「自分の要望が放置されず、すぐに対応してもらえる」という体験はプロダクトへの信頼に直結します。この社内対応のスピード感が開発チームへの信頼を作り、結果的に顧客対応(外部へのCS)の質を底上げすることにも繋がっています。

各部門への「専属サポート担当」の配置

プロダクトの価値を正しく理解し、使いこなしてもらうために、事業部門のメンバーが各部門に専属で付き、サポート窓口として動いています。

部門ごとに抱えている業務課題は異なります。専属担当がつくことで、「この部署の業務なら、セキュアチャットをこう使うと便利ですよ」といった踏み込んだ提案やサポートが可能になり、結果として利用頻度と満足度(NPS®)の向上に大きく貢献しています。

爆速でサイクルを回す。Feedbackチャンネルでのリアルなやり取り

仕組みを作っても、それが機能しなければ意味がありません。ここでは、実際に私たちのFeedbackチャンネルで行われているやり取りの一部をご紹介します。いかに「5分以内のファーストレスポンス」と「ネクストアクションの提示」が実践されているかを感じていただけると思います。

事例1:「アクション数が多くて辛い」というペインへの即時対応

並列チャット(複数モデルへの同時質問機能)の起動について、社内から強めのペインが寄せられた事例です。

👨‍💼 社内メンバー:

ワンアクションかノーアクションで並列チャットを開始したいです。フラストレーションがすごく溜まる。いまだと最低でも4アクション(モデル選択ボタン、トグル、モデル1、モデル2を押す)いるので辛いです。

🛠 開発担当者:

アクションを減らせるように導線を見直します!ちなみに、モデルを選択する際、自動で選択されるのはどう思いますか?(性能いいものから順に、もしくは分類ごとで自動選択など)

「使いづらい」という不満に対して「検討します」で終わらせず、その場ですぐに「自動選択にするのはどうか?」という具体的な改善アイデアをぶつけ返し、一緒にUIの正解を探るコミュニケーションが発生しています。

事例2:独自プロンプトなどの設定を保存できる「Gear機能」の共有範囲に関する要望

👨‍💼 社内メンバー:

Gearの共有を「全てのメンバー」だけではなく、個別でもできるようにしたいです。

🛠 開発担当者:

明日か明後日に公開予定です!

要望に対して「いつできるようになるか」を即答し、しかもそれが翌日というスピード感。こうした小さな成功体験の積み重ねが「要望を出せばすぐ良くなる」というプロダクトへの信頼(NPS®の向上)に直結します。

事例3:セキュリティと利便性のトレードオフ議論

セキュアチャットの肝である「個人情報のマスキング機能」についてのフィードバックです。

👨‍💼 社内メンバー:

感想で申し訳ないのですが、日付を自動マスキングするのは必要なのかな?と思いました。マスキングの量が増えると他の重要な情報を見逃しやすくなるし、果たして日付はどこまで機密性があるのかなと。

🛠 開発担当者A:

契約書の契約日付などが機密に当たる前提はありつつ、コンテキストによって不要だよねという理解をしています。ご意見を参考に対処を検討します!

🛠 開発担当者B:

実は、日付など特定の型をマスキング対象から外す設定を、管理画面からできるようになるので少々お待ちください!

「機密情報を守る」という大前提と、「日常的なチャット利用でのノイズになる」というUXのトレードオフについて、社内で率直な議論ができています。また、開発側が仕込んでいる機能(管理画面での除外設定)が、ユーザーのペインと正しく合致していることの答え合わせにもなっています。

フィードバックを自動でIssue・PRに変える仕組み

ここまでは人によるやり取りを紹介してきましたが、私たちはこのサイクルをさらに加速させるため、仕組みの自動化も進めています。

具体的には、チャットボットを使ってその場でIssueを起票できるようにし、さらに「bug」ラベルが付いたIssueについては、修正用のPull Request(PR)が自動で作成されるところまで連携させています。

これにより、「使いづらい」という声が上がってから修正着手までの初動が大幅に短縮されます。担当者はゼロから実装するのではなく、自動生成されたPRをレビュー・調整するところから始められるため、「爆速でサイクルを回す」ことを技術面から支える基盤となっています。

取り組みの成果:NPS®スコアの推移

このような改善サイクルを回すことで、実際にスコアにも明確な変化が表れ始めました。

私たちは5月から毎月月初に全社員向けのNPS®アンケートを実施しており、現在までに3回の計測を終えています。

具体的なNPS®の値は非公開ですが、推奨度の平均スコアは5.96から7.00、7.31へと上昇しました。初回から3回目までで、1.35ポイント改善しています。

前述の通り、NPS®において「0〜6点」は批判者に分類されます。つまり、1回目の時点では平均的なユーザーが「批判者」ゾーンにいたのに対し、2回目には「中立者(7〜8点)」のゾーンへと壁を突破したことを意味します。この数字は、日々の地道なフィードバック対応がユーザーの心境を確実にポジティブに変化させている証拠だと捉えています。もっともスコアはあくまで代理指標です。私たちが目指しているのは数字そのものではなく、全社員が安心して生成AIを使いこなし、その体験を顧客に届けられる状態です。

おわりに

社内NPS®に向き合うことは、顧客に向き合うこと。

NPS®という指標は、非常にシビアです。ちょっと不満があるだけで、スコアはあっという間にマイナスに転落します。

しかし、だからこそ「社内NPS®」をOKRに据え、Feedbackチャンネルでの迅速な対応や、専属サポートによる泥臭いヒアリングを続ける価値があります。社内のメンバーから「他のツールよりセキュアチャットを使いたい」「このプロダクトを他社にもおすすめしたい(推奨者)」と言ってもらえる状態を作ること。その熱狂こそが、最終的に社外のお客様へ届ける価値の最大化に繋がると信じています。

これからも、私たちは圧倒的なスピード感でユーザーのペインを解消し、最高に心地よいAI体験を追求していきます。

※NPS®に関する商標表記

Net Promoter®, NPS®, NPS Prism®, and the NPS-related emoticons are registered trademarks of Bain & Company, Inc., NICE Systems, Inc., and Fred Reichheld. Net Promoter Score℠ and Net Promoter System℠ are service marks of Bain & Company, Inc., NICE Systems, Inc., and Fred Reichheld.

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WRITER

Yuta Sugimura

Acompany / プロダクトエンジニア

Acompany セキュアチャット開発を担当

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