知られざる急成長AIセキュリティ技術と、激変だったAcompanyの2025年総括

公開日:2026.05.01


※この記事は『2025年12月25日』に公開した内容をもとに掲載しています。


2025年も残すところあとわずかとなりました。毎年、この時期にアドカレを書きながらあっという間で、激動の1年だったと感じていますが、今年も例に漏れない1年でした。

さて、去年の年末に「2025年は『AIセキュリティと秘密計算』で世界を目指す」という記事を書きました 。今回はその総括として、私たちが取り組んでいる「秘密計算(Confidential Computing:CC)」という技術の劇的な進化と、Acompanyの激動の1年を振り返っていこうと思います。

秘密計算(CC)がAIセキュリティの「デファクト」へ

みなさんは、「秘密計算」という言葉をご存知でしょうか。これは、データの「保存時」「転送時」のみならず、「利用中(in-use)」もデータを保護したまま処理できる技術です 。

秘密計算とは

弊社が2020年にこの領域で事業を開始したときは、知っている人のほとんどいないニッチな技術でした 。しかし、今やAI時代のデータ利活用における「必須のインフラ」になるべく、急激な普及が進み出しています。まさに今勝負すべき、Why Nowを持つ領域になっています。

特に、ハードウェア型秘密計算であるConfidential Computingが今、AIセキュリティのデファクトスタンダードの地位を確立しつつあります。ガートナー社が発表した「2026年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」にも選出され、2029年までに信頼されていないインフラ上での業務の75%以上が秘密計算で保護されると予測されています 。

ガートナー社が発表した「2026年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」にConfidential Computingがランクイン

この予測を裏付けるように、すでに実用化の波はBigTechを中心に大規模に進んでいます。Appleによる「Apple Intelligence」への大規模採用 や、Googleによるオンプレミス環境向け「Gemini」での標準的な採用 など、もはや秘密計算は特別な技術ではなく、AIを安全に届けるための「標準的なインフラ」となりつつあります。

-Private Cloud Compute: A new frontier for AI privacy in the cloud

-オンプレミス環境で Gemini と Google Agentspace を提供開始

ハードウェア秘密計算がAIセキュリティにおいてこれほどまでに重要となっている理由は、主に以下の3点に集約されます。

  1. ハードウェア・エコシステムの発展:NVIDIA(H100/B200など)やIntel、AMDがGPUやCPUにTEE(信頼実行環境)を標準搭載したことで、「AIの学習・推論を暗号化したまま高速で行う」ための物理的基盤が整いました。
  2. 主要クラウドの標準採用:Azure、GCP、AWSといった主要プラットフォームが「Confidential AI」を重要戦略に掲げており、企業の機密データをクラウドAIに投じる際の「唯一の現実的な解」として推奨されています。
  3. 「Data in Use(処理中のデータ)」保護の唯一性:従来の暗号化技術では防げなかった、メモリ上でのデータ漏洩や管理者による覗き見をハードウェアレベルで防げるのは、Confidential Computingのみです 。

さらに、この流れは技術的なトレンドに留まらず、法規制の側面からも裏付けられ始めています。直近では、EUの金融機関を対象としたICTリスクに関する法律「デジタル・オペレーショナル・レジリエンス法(DORA)」に関する規定において、処理中のデータの暗号化(秘密計算)について明示されました 。

海外の規制動向:EUの金融分野 DORA法について

金融機関は、ICTリスク評価の結果に基づき、対象となるデータを保存時や送信時、そして必要な場合は処理中も暗号化すべきである。

(原文)
Financial entities should encrypt the data concerned at rest, in transit or,
where necessary, in use, on the basis of the results of a two-pronged
process, namely data classification and a comprehensive ICT risk
assessment.

出典:デジタル・オペレーショナル・レジリエンス法(DORA)

このように、AIのみならず金融などの重要インフラ領域において、秘密計算は「リスクに応じた適用検討が必要な技術」として急速に拡大を始めています 。

日本政府・国会でも注目される「信頼」のインフラ

この潮流は、実は日本政府内でも急速に強まっています。2025年4月のAI法に関する通常国会答弁においても、プライバシー保護技術(PETs)と個人情報保護法に関する議論の中で、秘密計算を含めた技術の活用方針が言及されました 。

AI法に関連する国会答弁で、秘密計算を中心とするプライバシーテックが言及

また、デジタル庁の有識者委員会には弊社の竹之内が委員として参画し、国際間の信頼できるデータ活用の実現に向けた活動を推進しています 。政策という面でも世界と比べても日本はいい位置にあり、日本ゆえの強みを活かせるフィールドになっています。

技術という「点」だけでなく、政策という「面」でのアプローチを並行してきたことは、Acompanyの非常に強固な強みになっています。

秘密計算領域の第一人者でもあり、弊社の執行役員の竹之内も、この領域の深掘り記事を書いていますので、ぜひあわせて読んでみてください。

-2025年を振り返ったら、来年が楽しみすぎる!

Acompanyが挑む「データ活用と保護のジレンマ」

改めて、Acompanyが何を解決しようとしているのか。昨今、企業での生成AI導入が進んでいますが、多くの企業が社内の機密情報、つまり最も価値のあるデータをAIに渡せずにいます。そこには「データ活用」と「機密情報保護」のジレンマがあります。私たちは、秘密計算を始めとした「攻めのセキュリティ技術」によってこのジレンマを解消し、データ活用のボトルネックを取り除くことをミッションとしています。

今年5月には、これを表現する新ミッションとして「Trust. Data. AI.(あらゆるデータとAI活用に、信頼を。)」を策定しました 。

新ミッション:Trust. Data. AI.

2025年の総括:世界への挑戦と着実な前進

2025年は、Acompanyにとって「非連続な成長」を遂げた1年でした。

◆シリーズBの資金調達発表:SBIインベストメントやGCPといった国内屈指の巨大ファンドを株主に迎え、事業加速に向けて資金面と体制強化を実現しました。

-巨大ファンドによるシリーズB調達と、Acompanyの次のステージについて

◆初の自社カンファレンス開催:平井初代デジタル大臣や個人情報保護委員 、デジタル庁、国内大手企業からの豪華な登壇者とともに、信頼あるデータとAI活用を考えるカンファレンスを実施。200名以上が参加し、非常に大きな反響をいただきました。

-AI時代のデータ活用はどこまでOK?個人情報保護委員会/デジタル庁の視点から学ぶ、企業が今すべきこと

◆KDDI社との業務提携:7月にはKDDI社との提携を発表し、約4,000万人のデータをAIで安全に利活用するための基盤提供と、さらなるプライバシー保護技術の展開を加速させています。

-AcompanyとKDDI、プライバシー保護技術における提携を開始

◆世界TOP10入りと受賞ラッシュ:「スタートアップワールドカップ2025」にて、東京大会で優勝し日本代表として、世界に出場。3万社以上のエントリーの中からTOP10入り。10月には日経主催のAIサミットで最優秀賞を受賞、12月も政府系起業家表彰制度のJapan Venture Awardsにおいて「中小企業庁長官賞」を受賞しました。

-世界を狙うAIセキュリティ革命 AcompanyがスタートアップW杯東京優勝

-スタートアップワールドカップ2025、世界チャンピオンはCoreshell社 東京代表・Acompanyが日本勢として唯一トップ10入り

-「日経賞」に秘密計算のアカンパニー 生成AIサミットが閉幕

-Acompany代表の高橋が、第25回 Japan Venture Awardsにて中小企業庁長官賞を受賞しました

その他にも、グローバルにおいて本領域で先行するスタートアップのファウンダーと直接話をしてきましたが、見ている世界は同じであり、十分に戦えるという手応えを得ました。同時に、加速し続けなければ瞬時にふるい落とされるという強烈な危機感も得た年でした。

さいごに

2025年も大きな変化がありましたが、2026年はこれまでに仕込んできたものが一気に花開くという期待が高まっています。

HTTPSがWebのデフォルトとなったように、Confidential ComputingはAIにおけるデフォルトとなる技術だと考えています。私たちはこの未来を実現し、2035年までにグローバルNo.1という野心的な目標の達成を目指していきます。

2026年もさらなる飛躍の1年にしていきます!

Ryosuke Takahashi のプロフィール画像

WRITER

Ryosuke Takahashi

Acompany / 代表取締役 CEO

CEOとしてAcompanyの経営全般を担う

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