コンサル、VCを経てスタートアップへ。5年越しの意思決定をした話

公開日:2026.05.01


※この記事は『2025年6月2日』に公開した内容をもとに掲載しています。


こんにちは、植木です。
この5月末でSpiral Capitalを退職し、6月1日付で株式会社Acompany(アカンパニー)に参画しました。

経歴としては、戦略コンサル(5年)→VC(5年)を経て今回の転職です。元々Acompanyは投資先の一社で、私は株主として関わっておりましたが、「なぜ転職を考えたのか」「その中でなぜAcompanyに入社したのか」について、少しでも参考になればと思い書きました。

【自己紹介】
東京大学法学部卒業後、ZS Associatesに入社し、大手製薬企業の営業・マーケティング戦略に関するコンサルティングに従事。その後、ドリームインキュベータに入社し、ヘルスケア・エネルギー・保険など様々な業界の大企業における新規事業企画やスタートアップの資金調達を支援。2020年Spiral Capitalに参画し、国内スタートアップへの投資を担当。2025年6月株式会社Acompanyに入社。

Acompanyとの出会い

最初は、とある飲み会で「同世代(93年世代)の優秀な起業家」として代表の高橋さんの名前が挙がり、Acompanyを知りました。秘密計算という技術を活用して何かの課題解決に取り組んでいることは分かりましたが、技術もユースケースも一切分からず、「ふーん、そんな企業があるんだな」くらいでその場は終わりました(笑)

そこから数ヶ月して、Acompanyがプライバシーテックスタートアップにリブランディングした旨が発表され、同時期に偶然高橋さんにお会いしてピッチを聞く機会もあり、ようやく事業理解が追いつきました。

-秘密計算スタートアップを辞めます。

最初のユースケースとして「組織(企業)を超えたデータコラボレーション」(データクリーンルーム)を掲げていましたが、背景にある課題感については元々理解しており、比較的キャッチアップは容易でした。というのも、私はVCでヘルスケア領域の投資を進めることが多かったのですが、当該領域の大手プラットフォーマー企業が個人情報保護の観点から他企業とのデータの結合・分析が十分にできていない課題を持つことを聞いていたためです。

ここからAcompanyに関心を持ち、2022年末に投資実行、以降約2年半株主として関わり現在に至ります。直近ではシリーズBの資金調達を終え、株主としての支援に一つ区切りが付いたこともあり、転職することにしました。

-Acompany、SBIインベストメントとグロービス・キャピタル・パートナーズ等を引受先とする第三者割当増資により、総額11億円の資金調達を実施

転職を考えたきっかけ

何か特別な理由がある訳ではなく、「ベンチャーキャピタリストあるある」と勝手に思っていますが、多くの投資先と関わる中で自分も挑戦したくなったという極めてシンプルな理由です。

VCに入った頃は「ハンズオン支援を頑張ります!」と意気揚々と(笑)入社した訳ですが、実際に5年間やっていく中で、

  • VCは(いわゆるPE等と異なり)マジョリティ出資を行うケースは少ない上、担当する投資先社数も多いため、一社一社に対して提供できるハンズオン支援の内容には限界がある
  • そもそも金融業であるVC視点では、ハンズオン支援が必要な(=ドライに言えば ”手がかかる” )投資先が増えることはリソースの観点で望ましくない

ということを実感しました。
目下はグロース市場の上場維持基準引き上げに関する議論が進み、そもそも日本国内では大企業によるスタートアップの大型買収が少ないことも相まって、スタートアップのExitを取り巻く環境は厳しく、VCのアセットクラスとしての価値が問われ始めています。
こうした中、VCのあり方ひいては投資先への関わり方も変容するのだろうと思いますが、自分の年齢や今後の自己成長も考えて、このタイミングでスタートアップに行こうと決めました。

Acompanyに入社した理由

理由1:「技術 × 法律 × ビジネス」三位一体の事業構造

VCに入る前は、ドリームインキュベータ(以下、DI)にて主に新規事業企画を中心とする戦略コンサルティングに従事していました。あるプロジェクトで「顧客企業が有する技術へのニーズを高めるべく、ロビイングで社会的な意義を説明して法律/制度変更に働きかける」経験をしたことで、法律含む周辺環境を適切に変えて大きな事業創造を実現する面白さを垣間見ました。
今振り返ると、DIの事業創造支援(ビジネスプロデュース)は、行政も含む様々なプレイヤーを巻き込む点で通常の戦略コンサルティングとは異なるユニークな支援で、貴重な経験をさせて頂いたなと感謝しています。

株式会社ドリームインキュベータHP 「『事業創造支援』の進め方」

Acompanyは、秘密計算という技術からスタートし、社会実装に法的な位置付けの変更が必要と考え、プライバシーテック協会を設立してロビイングを推進しています。
こうして技術と法律を一体としてソリューションを構築し、大きなビジネス上の付加価値に繋げていく事業構造が好奇心をくすぐるものがありました。

理由2:技術ニーズの高まりと事業構想の拡大

2022年末の投資時は、前述の通り、組織(企業)を超えたデータコラボレーションを実現する『AutoPrivacy DataCleanRoom』を提供していました。その後、2024年4月にはプライバシーガバナンス強化支援アプリケーション『AutoPrivacy Governance』の正式提供を開始し、プライバシーテック企業として事業を拡大しつつありました。

時を同じくして、Acompanyが採用するハードウェア秘密計算には技術トレンドとしても追い風が吹いていました。元々CPUでしかサポートされていない技術でしたが、GPUでもサポートされ、生成AIにおける秘密計算の利活用が現実的なものとなりました。実際、2025年4月から日本語対応して身近になった「Apple Intelligence」ですが、裏側にはハードウェア秘密計算技術である「TEE(Trusted Execution Environment)」が適用され、大きな話題となりました。

-Apple Intelligenceでも採用、普及が見込まれるプライバシー保護技術「TEE」とは

こうしたトレンドを受けて、Acompanyの事業構想は「個人情報に限らない機密データへ」また「生成AIを含めたデータの利活用へ」と大きく拡大し、私も投資時より一層大きな可能性を感じるようになりました。
端緒として、2025年2月にはデータとAIを保護するセキュリティサービス『AutoPrivacy AI CleanRoom』の提供開始を発表し、シリーズBの資金調達と合わせて新コーポレートミッションを公開しておりますので、こちらもぜひご覧ください。

-Acompany、新コーポレートミッション「Trust. Data. AI.(あらゆるデータとAI活用に、信頼を。)」を策定し、コーポレートサイトを公開

理由3:事業ステージのフィット感

理由2で事業の変遷を書きましたが、とはいえAcompanyはまだまだアーリーステージの企業です。これから大きな事業成長を実現しなければいけませんし、プロダクトが複数存在することで経営の複雑性が高いのも事実です。

先ほど書いた通り、スタートアップのExit及び資金調達環境が厳しい中で、限られた時間・資金でどのように最大限の事業成長を実現するかが一層重要になっています(当たり前ですが)。
そこで、事業を数値(KPI)で可視化し、素早く意思決定を下すことが必要になります。即ち事業と経営の橋渡しを強化する必要がありますが、これまで株主として外部者ながら両面を見てきた私であれば、一定の役割は果たせる事業ステージなのではないか?と考えました。

これから実現したいこと

話は少し変わりますが、コンサルからVCへ転職する時、最初はVCを候補先として見ておらず、スタートアップへ行くことを考えていました。
というのも、当時在籍していたDIには、こんな創業理念がありました。

” 未来のホンダやソニーを100社創る ”

-株式会社ドリームインキュベータ 創業理念

この創業理念は、スタートアップに限らず既存の大企業も対象に含むものですが、当時コンサルPJと並行してスタートアップの資金調達支援を担当して起業家に感化されたこともあり、単純な私は「やっぱり大企業じゃなくてスタートアップでしょ」と解釈していました。
ところが、お恥ずかしながら当時の私では「ここに賭けたい」と思う企業を決めることができず(当時の2019年は今ほどスタートアップに関する情報が豊富になかったのもありますが…)、ある意味では消極的な選択でVCに来たという経緯でした。(と書くとネガティブに聞こえますが、VCに来たことは本当に良い決断だった、と今振り返っても思います!)

それから約5年以上が経過し、ようやく今回自分が賭けたいと思える企業としてAcompanyに転職しました。コンサルであれVCであれ、これまでは外部から誰かを支援するキャリアを歩んできた訳ですが、初めて内部のメンバーとして関わることになります。これからは「Acompanyが未来のホンダやソニーになる」ために全力を注げたらと思います。

今回の転職含む自分のキャリアは様々な人に支えられた結果だなと実感しています。
末尾にはなりましたが、形を問わずこれまで私を支えてくれた方々、何より今回の挑戦に快く送り出してくれたSpiral Capitalの皆様に、この場を借りて改めて感謝申し上げます。

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Shuzo Ueki

Acompany / 取締役 CFO

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