「記録のための時間」を、患者さんと地域に向き合う時間へ——恵仁会が「Acompany セキュアチャット」で進める、安全な生成AI活用

公開日:2026.09.30

長野県佐久市。この地で医療・介護・福祉を一体で担うのが、社会医療法人恵仁会(以下 恵仁会)です。くろさわ病院と3つのクリニックを軸に、介護保険事業や障害福祉事業まで展開し、職員は約600名、事業所数は38。来年で設立90周年を迎える、地域に深く根ざした法人です。

その現場には、いつも「記録」があります。患者さんのお宅で話を聞き、メモを取り、事務所に戻ってから記録として入力する。何を残すべきか、抜け漏れはないか——その判断と入力に費やすエネルギーは、決して小さくありません。実際恵仁会では、相談業務を担う職員にとって、記録業務が業務全体の約5割を占めることもあるといいます。そしてその時間は本来、患者さんと向き合うために使いたい時間でもあります。

法人全体でICT化・デジタル化を進めてきた恵仁会が、次の一手として取り組みはじめたのが生成AIの活用でした。ただし医療・福祉の現場では、氏名や生年月日だけでなく、疾患や身体の状況といった機微な情報を日常的に扱います。一般的な生成AIに、そのまま入力するわけにはいきません。

「どれだけ便利でも、患者さんの個人情報を守れなければ導入は難しい」。その前提を満たす選択肢として導入されたのが、「Acompany セキュアチャット(以下 セキュアチャット)」でした。

セキュアチャットは、個人情報や機密情報を扱う業務でも安全に生成AIを活用するためのサービスです。用途に応じて、機密情報をマスキングして複数のAIモデルを利用するモードと、入力内容を外部AIに送らず利用できるプライベートモードを備えています。
今回は、介護事業部 地域支援事業課 課長の小林尚太さん、本部 基盤構築課 課長の林嗣人さんに、導入前の課題と導入後の変化、そしてその先に見据えているものを伺いました。

左から、小林 尚太さん(介護事業部 地域支援事業課 課長)、林 嗣人さん(本部 基盤構築課 課長)

【プロフィール】※敬称略

小林 尚太:社会医療法人恵仁会 介護事業部 地域支援事業課 課長
主に相談業務を行う部門担当。介護保険や障害福祉のケアマネジメント、長野県の委託事業を横断して担う。

林 嗣人:社会医療法人恵仁会 本部 基盤構築課 課長
法人の情報システムを担当。生成AIの導入検討と全体設計を主導。

生成AIを使いたい。でも、患者さんの個人情報は絶対に守らなければならない

ー まずは貴法人の事業と、お二方から見た組織の雰囲気を教えてください。

小林:恵仁会は長野県佐久市にある社会医療法人です。来年で設立90周年を迎えます。

整形外科や内科を中心に診療しており、くろさわ病院と、3つのクリニックを長野県内で運営しています。

その他にも、高齢者の介護保険事業や、障害のある方への障害福祉事業も展開しています。

私自身は介護事業部で、相談業務を担当しています。介護保険や障害福祉のマネジメント業務、それから長野県の委託事業まで、幅広く関わっています。

職員は約600名、38事業所を運営しています。地元に根ざした法人であることを大切にしており、長く働く人が多い組織です。

林:私も入職して13、14年ほどになります。法人内では情報システムを担当しています。

恵仁会は、職員同士のつながりが強い組織だと感じています。拠点は複数ありますが、拠点間でも連携がありますし、みんなが親切です。困りごとに対して、職員一人ひとりが誠実に、真摯に向き合う文化があります。そこは恵仁会の魅力だと思います。

ー 生成AIの活用に関する、今までの課題を教えてください。

小林:私の業務では記録業務が多く、時期によって差はありますが、業務全体の5割くらいを記録が占めている感覚です。

患者さんのお宅に伺ってお話を聞き、その内容をメモして、事務所に戻ってから記録として入力します。記録には国や団体が定めた様式があるので、聞いた話をその形式に落とし込んでいく作業になります。

メモが完璧に取れていれば良いのですが、実際には抜けているところもあるので、記憶を辿りながら書き上げることになります。ヒアリングのメモに取り残しがないか、他のメンバーに共有するためにどういう情報を残せば良いのか。この判断と入力にかかるエネルギーは、かなり大きいものでした。

他の作業が入って手が止まると、1件あたり1時間くらいかかることもありました。こういった時に生成AIを業務で利用できると良いなと考えておりました。

林:介護や福祉の業務は記録が非常に多いと、システム担当として感じていました。

生成AIが出てきた時に、言語を扱う精度が高いという点を見て、これは将来的に記録業務で使わないと話にならないだろうと思いました。いずれ生成AIは必ず扱うことになる技術だと感じていました。

ー 一方で、医療・福祉領域で生成AIを使う時には、個人情報の取り扱いが大きな課題になりますよね。

小林:はい。医療・福祉の現場では、個人情報が非常に多くあります。患者さんの氏名や生年月日だけではなく、その方の身体に関わること、疾患に関することもあります。

中には、ご家族にも話していないような病気や思いを抱えている方もいらっしゃいます。そう考えると、患者さんから共有いただいた情報を守ることはとても大事です。

林:医療の領域では、国からもガイドラインが出ていますし、個人の疾患に関する情報は「要配慮個人情報」と呼ばれ、個人情報の中でも特に機微なものです。

介護の領域も、同じようなレベルで情報の重要性が求められています。もし情報が漏れた場合、被害を受けるのは私たち法人だけではありません。サービスを利用されている患者さんが被害を受けることになります。

だからこそ、個人情報を守ることは最重要です。どれだけ便利で、業務を効率化できる生成AIであったとしても、患者さんの個人情報を守ることが担保できなければ導入は難しいと考えていました。

ー 導入前は、AIの利用そのものはどういう扱いだったのでしょうか。

林:AIを業務で使う場合は、事前に申請を出してもらう運用にしていました。安全に使えると言い切れる環境がなかったので、そうせざるを得なかったのです。

ただ結果として、現場の職員はAIそのものをほとんど使えていない状態でした。「使ってはいけない」というより、「使えるようにする道筋がなかった」というのが実情です。

導入の決め手は、技術への信頼と仕組みへの納得感

ー 生成AIの導入を進める上で、特に重視していた条件は何でしたか。

林:とにかく、個人情報を外部に出さずに使える生成AIであることです。そこを一番重視していました。

当初は、一般的な生成AIサービスの利用も選択肢として考えていました。正直なところ、 セキュアチャットを知るまでは、大手生成AIサービス事業者と個人情報の安全管理措置が契約上担保されていれば十分と思っていました。

ただ、セキュアチャットの技術や仕組みを他のAIと比較したときに、考え方が変わりました。医療・福祉の現場で使うなら、便利さや使い勝手を重視するよりも、情報を安全に取り扱うことができることのほうがずっと大事だと感じたのです。決め手になったのは、セキュリティ面、なかでもセキュアチャットの基盤技術であるConfidential Computing(機密コンピューティング)が信頼できそうだと判断できたことでした。

小林:個人情報を入れずにAIを使おうとすると、どうしても回答がぼやけてしまいます。でも、個人情報をそのまま入れるわけにもいきません。そのバランスが課題でした。

対してセキュアチャットのプライベートモードでは、個人情報を含む内容もそのままAIに入力して使える点が魅力的でした。このプライベートモードは、入力データを外部AIへ送らずに、独立した保護環境内で処理を完結することができるモードです。

もちろん、使う側としても、なるべく個人情報を入れないように気をつける必要はあります。ただ、安全に活用できる仕組みがあることは大きいです。

ー 導入にあたって、不安やハードルはありましたか。

小林:正直に言えば、私たちはConfidential Computingの細かいところまでまだまだ理解できているわけではありません。だからこそ、Confidential Computingの仕組みについて図で説明を受けて「情報が外に出ない」と直感的に理解できたことが大きかったです。

言葉だけの説明だと、「秘匿化していると言っても本当に大丈夫なのか」という心配がどうしても残ります。仕組みを図で直感的に理解できたことで、不安が解消され、関係者全員が納得することができました。

林:導入時に、Confidential Computingは国内のガバメントクラウドや海外の政府・防衛領域でも活用が進んでいる技術だと知りました。それだけ高い水準のセキュリティが求められる領域で使われている技術であれば、医療のように秘匿性の高い情報を扱う場面でも信頼できるのではないかと考えました。

ー 従来のITシステムへの投資と比べて、稟議の通りやすさに違いはありましたか。

林:判断材料が具体的だったことが大きかったです。

一つは、トライアルで実際に使って精度を確かめられたことです。
もう一つは、他のAIサービスと価格が変わらないのに、複数のモデルを使えるという点です。個別に契約を増やさなくても、必要なモデルを選んで使える。この2つが揃っていたので、投資の説明はしやすかったと思います。

またトライアルには、小林さんを含め、現場の方々も前向きに参加してくれました。

最大1時間かかっていた記録が20分に。AIで生まれた時間を、患者さんと向き合う時間へ

ー 導入後、記録業務はどう変わりましたか。

小林:一番大きいのは、手を止めずに使えるようになったことです。

以前は、メモを見ながら記憶を辿り、決められた様式に合わせて一から記録を入力していました。何を残すべきかを考えながら書く必要があるので、途中で手が止まることも多かったです。

いまは、聞き取った内容を音声で入力し、既定のフォーマットで出力させています。出力されたものを一部修正するだけで記録業務を完結させることができるようになりました。

そのため、他の作業が入ると1時間くらいかかっていた記録が、20分程度になりました。場合によっては、AIの処理を待つ時間くらいで済むこともあります。

林:通常のAIでは、患者さんとの間で取り交わしている個人情報利用に関するプライバシーポリシーに則り、入力できませんでした。しかしセキュアチャットでは、個人情報などをそのままAIベンダーに渡すことなく、さまざまなAIモデルを利用できます。個人情報を守りながら、用途に応じて適したAIモデルを選んで使え、安全性と利便性を両立できる点は大きいと感じています。

ー 現在は、どのような部門で使われているのですか。

林:利用部署は少しずつ広がっています。中心は事務部門です。

介護領域では、議事録の作成のように文字起こしを伴う業務が多いので、利用が増えてきています。一方で医療側は、医療専用のAIがすでにあるため、そちらを使っている状況です。

職員が安心して使えるAIが、介護・福祉現場の業務改善につながる

ー 今後、セキュアチャットに期待していることは何ですか。

林:セキュアであること、これが一番です。

私たち職員は、患者さんの病歴などの要配慮個人情報のような、人の深い部分に関わる情報を日常的に知る立場にいます。そういう職員にとっては、そもそもシステムに情報を入れること自体に不安がありました。その不安が、技術によってセキュリティが担保されているという形で解消されたことは、他のサービスにはない価値だと思います。

小林:一番は、AI活用において職員の心理的安全性を担保できることです。

医療・福祉の現場では、患者さんとのやり取りだけでなく、その他の外部ステークホルダーとのやり取りや相談対応も多くあります。内容も体や気持ち、制度などにまつわることで、ただでさえ神経を使う場面が多い中で、記録業務はさらに気を遣います。

だからこそ、職員が安全にAIを使える仕組みがあることが重要であると考えています。

職員が安心してAIを活用できる状態を作ることは、業務効率を高めることにもつながります。そうすると、これまでやりたくてもできなかったことに目を向けられるようになると思います。

たとえば、患者さん一人ひとりにより丁寧に向き合う時間を増やせます。さらに、地域社会の課題にも目を向けられるようになります。

地域の中で何が課題になっているのか、何が不足しているのか。そうしたことを私たちが見えるようにしていければ、地域全体がより強くなると思います。

会社概要

名称

社会医療法人恵仁会

理事長

黒澤 一也

所在地

長野県佐久市

設立

1937年

職員数

約600名

事業内容

病院(整形外科・内科ほか)、介護保険事業、障害福祉事業

コーポレートサイト

https://keijinnet.or.jp/ 

Fukumi Hashimoto のプロフィール画像

WRITER

Fukumi Hashimoto

Acompany / 営業部

顧客の理想と現実のギャップを埋める、当社のソリューションを通じてお客様の事業成長を一緒に描いていきたいなと思っています。

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