巨大ファンドによるシリーズB調達と、Acompanyの次のステージについて
公開日:2026.05.01
※この記事は『2025年5月14日』に公開した内容をもとに掲載しています。
2023年4月のシリーズAから約2年を経て、シリーズBの資金調達を発表いたしました。
-Acompany、SBIインベストメントとグロービス・キャピタル・パートナーズ等を引受先とする第三者割当増資により、総額11億円の資金調達を実施
今回のシリーズBは準備を開始して、ほぼ1年がかりでクローズまで至りました。長かった…!
シリーズBの投資家布陣としては、
シリーズB投資家一覧
〈新規引受先〉
- SBIインベストメント株式会社- グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社
- 株式会社Central Japan Innovation Capital(名古屋大学ファンド)
- 杉田浩章 氏(元 Boston Consulting Group 日本代表)
- 田中邦裕 氏(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)
〈既存引受先〉
- Beyond Next Ventures株式会社- Spiral Capital株式会社
- 株式会社DG Daiwa Ventures
- 三菱UFJキャピタル株式会社
という非常に頼もしい布陣での資金調達ラウンドを実施できました。社内外で協力をいただいた皆さん、本当にありがとうございました!
資金調達の発表に合わせて記事を書きたいと思いつつ、どんなテーマにしようかなと色々悩んでいたのですが、
- 今回の資金調達はSBIインベストメント、GCPという国内屈指の巨大ファンドの複数参画
- 非東京拠点スタートアップがどのような事業展開をしてきたのか
この2つの観点から以下のテーマで書いていこうと思います。
- なぜ複数の巨大ファンドから調達したのか/できたのか
- シリーズAからシリーズBへの変遷
- 調達を経て、今後何をやっていくのか
巨大ファンドが投資するとはどういうこと?
巨大ファンドに投資してもらう利点
シリーズBの準備を進めていく中で、ファンドサイズの大きな投資家にリードを取ってもらいたいと考えていました。なので、SBIインベストメント(約1,000億ファンド)にリードを取ってもらい、加えてGCP(約730億)に投資いただけたのは、かなり理想に近い形で着地できたと思っています。
そもそも巨大ファンドに入ってもらう意味については、「なんか凄そうだけど、実際どういう意味があるのか?」という質問が社内でも上がっていました。
スタートアップ視点からすると、ファンドサイズが大きければ出資できる金額も大きいので次回ラウンド以降の資金需要に対して継続的な支援を期待できる点が大きなメリットです。
例えば、今回出資いただいたGCPの7号ファンドでは以下のように1社あたり最大100億の出資(!!)が可能とのことです。
1社あたり最大100億円規模の投資を行うことにより、国内巨大産業のアップデートやグローバル展開を志すスタートアップへの投資を行い、日本の次世代産業創造の契機となりうる市場・テーマに取り組むユニコーン・デカコーン企業を創出していくことを狙いとしています。
ユニコーンとは評価額、要は会社の価値が1,000億(厳密には10億ドル)以上になったスタートアップを指します。存在が非常に希少であるから空想上のユニコーンと言われています。このさらに10倍の規模に成長した会社のことをデカコーン(デカ=10)とスタートアップ界隈では呼ばれています。
巨大ファンドはどのような会社に投資するのか
「巨大ファンドである」=「巨大なリターンを産まないといけない」ということでもあります。
例えば、VCファンドの必要リターンを3倍とした場合で考えてみると、
①ファンドサイズ10億の場合
→必要リターン:30億
②ファンドサイズ1,000億の場合
→必要リターン:3,000億
成功事例として株式10%保有の投資先が1,000億で上場した場合、100億(=会社価値1,000億×10%)のリターンがファンドに返ってきます。
100億のリターンは、①10億ファンドでは「10倍」のリターンとなりますが、②1,000億ファンドの場合では「10分の1」のリターンにしかなりません。
②で必要リターンである3,000億を生むためには、同じ規模(ユニコーン)を30社出す必要があります。(ユニコーン30社…!?)
もしくは、10%ではなくより株式保有比率を上げるか、例えば10倍の規模(デカコーン)を3社出すことでもこのリターンを達成することができます。どちらにせよ、可能な限り大きくなる可能性がある会社に投資していかないといけないということになります。
つまり、巨大ファンドの場合では基本的にはユニコーン(わかりやすいベンチマーク)やそれ以上のポテンシャルがある会社に投資していく必要がある、ということです。
したがって、先ほどのGCPのリリースでもユニコーンやデカコーンの創出に言及していたのはこのような背景ということになります。
巨大ファンドが投資したAcompany
改めて、今回のシリーズBで複数の巨大ファンドに投資いただけたのは、Acompanyの事業がユニコーンを超えて成長していく「ポテンシャル」が評価されたからだと思っています。
2020年から秘密計算という技術領域で事業をスタートさせて、約5年。当時は見えていなかったような事業機会が急激に広がっています。
2024年は秘密計算元年、急拡大する秘密計算の市場
Acompanyが取り組んでいるのはハードウェア型の秘密計算です。この技術はTEE(Trusted Execution Environment、信頼実行環境)やコンフィデンシャルコンピューティングと呼ばれます。
昨年、Apple社のAIサービス「Apple Inteligence」にTEEの大規模採用が発表されました。この発表にデータ / プライバシー分野の専門家の間では衝撃が走りました。いきなり世界最大のTEEの実用事例となったからです。
-Apple Intelligenceでも採用、普及が見込まれるプライバシー保護技術「TEE」とは
今年の4月には「Apple Inteligence」の日本語版も提供開始されたので、すでにこれを読んでいる方もこの技術を活用しているかもしれません。
またAppleだけではなくGoogleや、直近ではFacebookを提供するMetaもWhatsAppのデータ保護とAI利用の両立のために本技術の採用を発表しています。TEEはデータ / プライバシー保護とAI活用の両立を実現するコア技術としての地位を確立し始めています。
このような動きもあり、直近1,2年で複数存在する秘密計算手法の中ではハードウェア型秘密計算であるTEE / コンフィデンシャルコンピューティングが圧倒的な存在になってきました。2034年には$350B(約50兆円)、CAGRは46%を超えて急拡大する市場予想が示されています。

技術難易度による参入障壁
一方で、TEE / コンフィデンシャルコンピューティングは技術難易度が高く、ミドルウェアレベルから製品開発をしている企業は国内ではAcompanyがおそらく唯一の存在です。少なくとも経営レベルでコミットしているのは弊社のみだと思います。
Acompanyは世界的にもTEEを実用レベルで提供できる希少な存在です。
まだ黎明期にある本市場においてAppleやMeta、Googleといった超先進企業での導入が中心の中、AcompanyはFortune Global 500に名を連ねる企業への本導入を実現しています。
さらに、本領域における世界トップランナーの1社であるIntel社と協業し、共著論文を公開(!!)するという大きなニュースも発表しました。これはAcompanyの技術力が世界トップレベルの水準であると明確に示せた事例です。
資金調達金額においてもTEE / コンフィデンシャルコンピューティング領域のスタートアップの中で世界6位(※弊社調べ)。少なくともTOP10に入る規模になっています。
まだまだ「ポテンシャル」であり、今はまだ「ポニー」
とはいえ、まだまだ市場は黎明期であり、Acompanyが目指す未来に対しても数%程しか辿り着いていないのが現実です。
ゆえに、今回の資金調達を通じて「ポテンシャル」から一つ一つ「実績」へと変え、日本を代表するようなスタートアップへと成長していきます。
ちなみに、SBIインベストメント担当は「絶対にユニコーンにしますよ」と宣言して投資委員会を通してくれたそうです。(頼もしい)

次のステージのAcompany
資金調達リリースと同時に、新たなミッションの発表も行いました。

シリーズAからシリーズBまでの2年間
Acompanyは2023年4月シリーズA資金調達の発表以降、コア技術「秘密計算(TEE/コンフィデンシャルコンピューティング)」を中心にプライバシーテックを起点に事業に取り組んできました。
並行して、生成AIの台頭により企業・組織にとってデータ活用の重要性が一段と高まっています。
一方で、企業・組織の保有データのプライバシー保護に留まらず、サイバーセキュリティ、地政学リスク、規制準拠、AI倫理、さらにデータの品質や説明可能性まで含む多面的な観点で、いかに信頼できる形でデータやAIを利活用するかが喫緊の社会課題となっています。
このようなデータ活用における信頼の課題を解決するために、この2年間で様々な取り組みを行ってきました。
例えば、博報堂DYホールディングスとの"擬人化した"パーソナルデータ 「統計合成データ」で安全かつ信頼できるAI分析の実現に向けた協業。関西電力の新規事業「モアクト」のユーザーが、信頼してサービスを利用できるように、ガバナンス支援サービスを提供。今年2月には秘密計算を用いて信頼できる環境で、生成AIを利用可能とするサービスを提供開始しました。
別観点では、政策領域においては執行役員VP of Public Affairs の竹之内が、日本が提案し主導するデータを世界的に流通させ経済成長につなげる構想である「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT:Data Free Flow with Trust)」の実現に向けたデジタル庁の有識者委員会「データセキュリティワーキンググループ」の委員に就任し、国際間の信頼できるデータ活用の実現に向けた活動にも取り組んでいます。
-デジタル庁 データセキュリティワーキンググループ委員として、Acompanyパブリック・アフェアーズ スペシャリスト竹之内隆夫が参画
「プライバシー」から「トラスト」へ
このように現在のAcompanyは「プライバシー」に留まらず、データやAI活用における「トラスト(信頼)」領域へ事業を拡大しています。
このような実態を踏まえて、Acompanyは新ミッションとして「Trust. Data. AI. (あらゆるデータとAI活用に、信頼を。)」を策定しました。

この2年の間で培ったAcompanyの強みである秘密計算をはじめとしたデータ保護技術と、ガバナンスやコンプライアンスの知見を通じて、ステークホルダーから信頼されるデータ活用の実現を支援していくという事業定義に基づいています。
新ミッションのもと、Acompanyはこれまでの「プライバシー」軸での個人データ利活用という事業領域から、「トラスト」軸へと進化します。
個人データ領域に加えて企業の機密や安全保障、防衛などで障壁になる「重要なデータの保護と利活用のジレンマ」を打ち破って、データとAIによる社会課題の解決を加速させていきます。
新たな市場を創るという気概
昨今はコモディティ化が進むIT系スタートアップ終焉の時代と叫ばれ、これまでの延長線上ではなく、一段スケールを上げた大きな挑戦がスタートアップに求められるようになってきました。
GCP代表パートナーの高宮さんも、日本のスタートアップエコシステムは「いい会社づくり」から、「産業づくり」のフェーズに入った、と言及しています。さくらインターネット田中社長もITの終わりにより東京にいる必要性が薄まり、地方での研究開発型ディープテックの存在が大きくなっているとも指摘しています。Acompanyはまさにそのような性質をもつ企業の一社です。
非連続な未来を創る、圧倒的に

本領域の取り組みを開始してから5年、当時全く存在していなかった市場が立ちあがってきています。
技術の発展、時代の変化という大きな流れは当然としながらも、私たちは市場の最前線に立ち、自分たちで市場を創り、押し広げていくという気概を持って事業に取り組んでいます。
Apple intelligenceのような象徴的な事例が生まれてきたとはいえ、まだまだ市場としては黎明期であり、世界中のプレイヤーが手探りで進めながら市場を広げていっている状態です。
Acompanyはまだ誰も正解を持っていない最前線でチャレンジをしているので、超えないといけない壁もたくさんあります。
気が重くなるようなこともありますが、素晴らしいメンバーやタイミングに恵まれて、これまでも信じられないような前進を重ねて今に至っています。
そして、これからも今まで通り一つ一つをしっかりと乗り越えて、Acompanyがいないと実現できなかったような圧倒的な未来を創っていきます。
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